ちょっとした経験が
- あなたを高揚させたことはないだろうか。
- 衝撃を与えたことはないだろうか。
- そして、生き方を変えたことはないだろうか。
人生におけるこうした決定的瞬間は
偶然や幸運の結果によるものも多い。
だが、それがどうやって生まれるかを
詳細に検証した結果
強く記憶に残っている最高の瞬間は
「高揚」「気づき」
「誇り」「結びつき」
の4つの要素でできていることがわかった。
それらがあれば
その「決定的瞬間」を
あなたも魔法のように作り出せる!
だとすれば、偶然に任せていることはない。
本書は、そんな充実した瞬間を
あなたが自ら作り上げるための方法を
指南してくれる。
「どんな本? ざっくり教えて」
ディズニーランドのような、お客さんを魅了してやまないサービス、体験。そんな「最高の瞬間」を意図的、計画的に起こす方法。4つのポイントを押さえることで、「最高の瞬間」はつくれる。
「誰におすすめ?」
- お客さんを引きつける何らかのアクションを試みたい方
- 社員のやる気を引き出したい経営者
- 恋人、友人、家族にスペシャルな体験をさせたい方
「ここがポイント!」
顧客を魅了する「最高の瞬間」を、4つの要素を意識的に組み込むことで、実践する。それは1つでも、4つ全部使ってもいい。実際のケース、サンプルなども豊富に掲載されているので、イメージしやすい。内容の理解は、それほど難しくない。

チャプターごとに総括(まとめ)があり、便利。

『瞬間のちから』 目次
Part0
決定的瞬間
chapter1
決定的瞬間とは?
なぜ、その瞬間を創るべきなのか?
勉強を頑張っている学生を称えるイベントがあったらいい
決定的瞬間は偶然起こるものなのか?
長く記憶に残るような決定的瞬間を増やす
chapter2
瞬間に着目する
どのような瞬間が価値ある時間なのか?
いつが大切な瞬間か知っておく
「結婚生活を振り返るセレモニー」
節目を祝うことの重要性
最悪の事態は、わからないように覆い隠す
注目スべき瞬間に組織はどう向き合うか
PART1
高揚する瞬間
chapter3
最高の瞬間を作り上げる
時間や労力を投じた「記憶に残る最高の瞬間」作り
「ゴールディング裁判」
顧客サービスを成功させるには
高揚する瞬間を作る3つの作戦
「私は恵まれている。余命3ヶ月と告げられたのだから」
chapter4
台本を逸脱する
戦略的サプライズを持って人々の予想を裏切る
ぬいぐるみのジョシーの休暇
変革を起こすには、本質的に台本から逸脱する
戦略としての「台本からの逸脱」
PART2
気づく瞬間
chapter5
真実に直面して当惑する
自分たちの生活に嫌悪感を抱かせて、意識改革を後押しする
屋外排泄の習慣をなくすには
世界の見え方が変わる決定的瞬間
脳に何かがひっかかって苦戦する
chapter6
気づくために挑戦する
自分自身に対する理解を深める必要があるなら
自己洞察につながる「行動」をする
「ピーク・エンドの法則」
メンターの方程式:「高い基準+保証」で後押しする
メンターの方程式:目標と支援には強い力がある
リスクに挑む
PART3
誇らしく感じる瞬間
chapter6
気づくために挑戦する
自分自身に対する理解を深める必要があるなら
自己洞察につながる「行動」をする
「ピーク・エンドの法則」
メンターの方程式:「高い基準+保証」で後押しする
メンターの方程式:目標と支援には強い力がある
リスクに挑む
chapter7
周りの人たちを認める
相手を認めることによって、彼らにとっての決定的瞬間を作る
「声を出さずに歌いなさい」
みにくいアヒルの子が美しい白鳥に変化するとき
相手を上手に評価する
心のこもった形で感謝を伝えるには
「感謝の訪問」の効果
chapter8
節目を増やす
私たちは誰でも節目が好きなのだ
最終目標にたどりつくために
レベルアップ戦略でやる気になる節目を作る
誇らしく感じる瞬間に気づいているか
私たちは、誇らしく感じるチャンスを逃している
節目は最高の瞬間に値する
最後のひと押しを出す節目効果
chapter9
勇気を出す練習をする
勇気とは恐怖に抵抗し、打ち勝つことである
何が、公民権運動における第一歩を支えたか
勇気を出す瞬間
プロの役者が参加した実践練習で緊張感を作り出す
PART4
結びつく瞬間
chapter10
共有できる目的を作る
グループメンバーと親しくなっていくためには
患者の幸せの探求という目標を共有する
全スタッフが一緒に取り組む
つらい体験—共通の課題に取り組む
より大きな意味—目的をもたせる
chapter11
結びつきを強める
あらゆる関係作りに有効な「秘伝のソース」
教師と親の関係が学校改革のカギだった
相手が敏感に察知している時、人間関係が強まる
相手を敏感に察知して人間関係をスムーズにする
「親密になりやすい」会話、「なりにくい」会話
chapter12
瞬間を大切にする
どうすれば、最高の瞬間をより素晴らしいものにできるか
決定的な瞬間そのものを目標にしよう
「気づきの瞬間」
もっと知識を深めたい読者への提案
Appendix
トラウマの瞬間への対処
前向きな成長のための5つのアドバイス
著者紹介 チップ・ハース&ダン・ハース
チップ・ハース
スタンフォード大学ビジネススクール教授。専門は組織行動論、経営戦略。GoogleやGapなどの世界的企業のコンサルティングを行う。450社を超える新興企業の事業戦略や企業メッセージの策定をサポートしている。シカゴ大学ビジネススクールやデューク大学フュークアビジネススクールでも教鞭をとっていた。カリフォルニア州ロスガトス在住。
ダン・ハース
デューク大学社会起業アドバンスメント・センター(CASE)シニアフェロー。ハーバード大学ビジネススクールでMBA取得後、同学の研究員を務める。オンライン教育大手「シンクウェル」共同創設者。社会起業家の活動を支援している。ノースカロライナ州ダーラム在住。
※目次、著者紹介は、ダイレクト出版から正式に提供された文章です。
『瞬間のちから』 レビュー・感想
ワンダフルライフ
朝もやの中、施設の扉が開き、人々が待合室に入ってくる。
年配の人が多いが、中には若者や少女もいる。病院だろうか。
一人ずつ、順番に名前が呼ばれ、個室に入る。
簡素な一室に、職員が座っており、こう告げられる。
「あなたは、お亡くなりになりました」
ここは、天に召される前に、一時的に滞在する施設。
ここで、何をするのか? あなたの映画をつくる。
あなたの人生において「最高の瞬間」を映画にして、それを見ながら、その最高の思いを胸に、昇天する。
ここに呼ばれた故人は、自分の人生の「最高の瞬間」は、いつなのか答えを出さなければならない。
あなたなら、いつをあげるだろうか?
子供時代、プロポーズ、女性との情事、まだ十代の少女はディズニーランドの思い出を挙げた……。
これは、数多くの受賞歴のある是枝裕和監督の初期の映画『ワンダフルライフ』。
実際に、一般の人も含め、人生の思い出をインタビューして作られている。
人生において、誰しも、忘れることのできない、最高の瞬間というものがある。
ビジネスにおける「最高の瞬間」
「最高の瞬間」は、人生において、突如、劇的に訪れる。しかしながら、ビジネスでこの「最高の瞬間」を創出している企業がある。
ディズニーランドはすぐに思いつくかもしれない。あなたがビジネス書をよく読んでいるなら、リッツカールトンホテルなども挙がるだろう。
ディズニーランドで、清掃スタッフが突如パフォーマンスをし始める。そこにいたお客さんにとって、それは楽しい瞬間になるはずだ。隠れミッキーを見つけた時も、思いの外、楽しいだろう。
ディズニーランドは「サプライズ」を意図的に起こしている。
では、どうすれば「最高の瞬間」を起こすことができるのか。
それが、本書『瞬間のちから』に書かれている。
ベストセラー作家
『瞬間のちから』の話の前に、著者について話しておきたい。著者のチップ・ハース&ダン・ハース兄弟は、ベストセラー作家である。『アイデアのちから』は150万部を超え、25カ国以上で翻訳されている。もちろん日本でも出版されている。
『アイデアのちから』 チップ・ハース&ダン・ハース
私も『瞬間のちから』を注文する際に、「ああ『アイデアのちから』の著者なのか、なら間違いないだろう」と購入を後押しされた。
『アイデアのちから』は「人にアイデアを伝える際に、どうすればうまく伝わるか」というのを法則化して、説明した本だ。
今回の『瞬間のちから』も、このベストセラーを意識したタイトルになっている。
『瞬間のちから』の4つの構成要素
本書『瞬間のちから』も、「最高の瞬間」を構成する4つの要素を説明している。この4つの要素が、1つないし複数、必ず「最高の瞬間」にはあるという。
本書では、たくさんの例、エピソード満載で、具体的にイメージして理解できるようになっている。
4つの要素を一つあげると、「高揚」だ。最高の瞬間には、「楽しい!」「嬉しい!」といった、感情的な高揚感が伴う。例えば、旅行、デート、コンサートなどは高揚感があり、思い出深い瞬間になるのではないだろうか。普通の日常の日は思い出すのが難しいが、旅行の記憶はよく覚えている。
ビジネスに活かすには、どんなことが考えられるだろう。
ラッキーピエロ
これは、函館にある「ラッキーピエロ」。ハンバーガーを売っているファストフードの有名店だ。味にも定評がある。これは店内の様子。店内をこういった風に飾っている。
こんな大きな飾りをしなければ、もっと座席が置けてお客を収容できる。観光地なので、お客は混み合っている。でも、この飾りがあれば、子供たちは喜ぶし、家族連れにとっても楽しい時間が過ごせそうだ。
さらにお土産コーナーもあり、いろいろなオリジナルグッズも買える。もう一度。ここはファストフード店だ。
会社でのハッピーバースデー
最高の瞬間の演出は、顧客だけではなく、社員にも行える。
私の以前いた会社では、誕生日を祝ってもらえた。「今日は○○さんの誕生日です」と皆がいるところで言われる。そして、封筒が渡される。この封筒が会社からの誕生日プレゼントだ。タネを明かせば、デパートの商品券。
午後3時のおやつの時間になると、誕生日ケーキを皆で食べる。社員同士のコミュニケーションにもなるし、「おめでとう」と皆から言われるのは、嬉しいものだ。
でも「瞬間」には、「最高の瞬間」もあれば、その逆もある。しかしながら、「最高の瞬間」を作れるような体制が整っていれば、クレームやトラブルもうまくリカバリーができるかもしれない。
従業員は突然に……
私が、とある旅館に泊まったときのこと。部屋にいたとき、突然、ガチャっとドアの鍵が開いて、清掃スタッフが入ってきた。
「申し訳ございません」とその場ですぐに謝罪し、そこからスタッフは出て行った。
幸いチェックアウト前で、服も着替え、部屋を出る準備をしていたので、私にとって何てことはないことだった。しばらくして、ロビーに行き、チェックアウトの手続きをすると、フロント係が「先ほどは大変失礼をいたしました」と丁寧に謝罪の言葉を述べた。
清掃スタッフは自分のミスを報告し、他のスタッフと共有する仕組みがこの旅館にはある。『7つの習慣』で読んだリッツカールトンのエピソードと似ているなと感じながら、私は感心した。
「旅館の従業員に部屋のドアを無断で開けられた」というマイナスの出来事が、「ミスを共有して誠実に対応する旅館」というプラスの印象に変換されている。
それは、その「瞬間」を大切にする姿勢に他ならない。この『瞬間のちから』にもたくさんのエピソードが載っている。読者の立場それぞれで、参考になるだろう。
『瞬間のちから』は誰にオススメか
本書は、サービス業、セールス、営業、経営者などには、大変に参考になる。「最高の瞬間」を計画的に作り出す方法がわかるからだ。うまく顧客にハマれば、売上も増大するだろう。話題にもなるかもしれない。組織の結束も強まり、パフォーマンスもアップする。
しかし、率直に言えば、そういった業務に当てはまらない人は「自分には関係ないな」と感じるかもしれない。
ただ、この「最高の瞬間」は、すべての人にとって有益な書であると、私は感じた。実際、本書を読みながら、考えていたことは「恋人、友人、家族などプライベートなシチュエーションでも活きるだろう」ということだ。むしろ、そちらの方が実践するのは簡単だ。身近な人をちょっとしたアイデアで、喜ばせばいいのだから。
月1回の親孝行
最後にちょっと、私の個人的なことを書きたい。「親孝行」のことだ。この数年、実践していることがある。ささやかなことだが、月1回実家に帰省している。毎回、父と母にお土産を用意して、庭の手入れや掃除をしたり、ただ話を聞いたりするだけだ。ここでのポイントは「月1回」だと考えている。「時々顔を見せに帰ってきてくれた」よりも「月1回必ず帰ってきてくれた」と感じてほしいからだ。
でも、もうやり始めてから、5年ほどになる。お土産として買っているお菓子の類も、デパ地下のほとんどの店で買った。最近は「今年は何かスペシャルなことをしたいな」とあれこれ考えていた。
今回、私はこの『瞬間のちから』を読んだ。グッドタイミング。この本にある「最高の瞬間」を構成する4つの要素を盛り込んで、両親に親孝行をしてみたい。
誰しも「ありきたりな、つまらない、退屈な人」なんて思われたくない。自分にとって大事な人を、パッと笑顔にしたい。もっと言えば、感動させてみたい。それは、その人の人生の中で、いつまでも輝いている、忘れられない瞬間だ。
あなたも、ビジネスはもちろんのこと、大切な親しい人にも「最高の瞬間」をプレゼントしてみてはいかがだろうか。